1.案ずるより産むが易し
『企画書』

ほんたまでは、企画書の応募フォームを用意しておりますので、そちらをご活用ください。

それにしても、通りやすい出版企画って何でしょうか?

とても難しいテーマです。時代の流行に乗ってもダメなときはダメ。読者が笑ったり泣いたりできればいいわけでもない。悩みが解決するお役立ち情報が満載だとアピールするだけでも十分でない。
ただ、ほんたまへの応募を予定してくださっている皆さんに、ぜひ自問していただきたいことが2つあります。

まず、『企画の内容と、自分のプロフィールは整合しているか?』。ここがチグハグでは、企画を通すのがかなり難しくなります。
たとえば、未婚の学生が、“結婚”“離婚”“育児”についての出版企画を出す場合、どれだけ精緻な理論を築き上げて展開しようとも、「お前が言うな」と、世間の既婚者は一蹴し、相手にしてくれないでしょう。この「お前が言うなの壁」を乗り越えるだけの説得力や魅力がある出版企画かどうか、一歩引いた視点で検討しなければなりません。
また、著者プロフィールが出版企画の主旨へ近づいていくよう、強調すべき経歴を見直してみるのもいいですが、やりすぎて経歴詐称とならないように注意しましょう。

2つ目の問いは、もっと大切です。『その企画には、他人がお金を出す価値があるだろうか?』を再検討していただきたいのです。
「ブログで○万アクセス来ています」「メルマガで読者に大人気です」というのは売り文句になりますけれども、忘れないでくださいね。ブログやメルマガはタダで読めるということを。
一方で、書籍は有料の商品です。あなたを見知らぬお客さんが、書店のレジで財布を出して、何百円、あるいは千数百円で買ってくれる内容かどうか、落ち着いて想像してみてください。
ちなみに、「読者に楽しみを提供する本」と「読者の悩みを解決する本」とでは、一般的に後者のほうが商品力を高めやすい傾向にあります。

また、出版社(版元)による企画採用とは、その企画に「投資する」という意味でもあります。「出版=投資」という版元視点は見落とされがちですが、一冊の書籍を形にするまでには、おおむね数百万から一千万円程度の経費がかかるそうです。書籍の売り上げが採算ラインを超えなければ赤字です。 その経営リスクを覚悟してでも「お金を出して協力してくれる版元さんがいるはずだ!」と信じられる企画かどうか、こちらも見つめ直してみてください。 「こんな本を出したい!」、そんな勢いのある情熱を携えていないと新しい一冊は世に出せませんが、同時に、「著者として、編集者にどんな価値を提供できるだろうか」という客観的な視点も持っていていただきたいと思います。
個人が版元へ提供しうる価値はあるはずです。原稿だけではなく、新たな刊行ジャンル開拓・〆切厳守・円滑なコミュニケーション・刊行後の販促の努力なども含まれるでしょう。

企画が次々に湧いてくるタイプの方には、玉石混交でいいので100個ぐらい貯まるまでメモしまくって、そこから、版元や読者がお金を出す光景を想像できる企画を徐々に絞り込んでいく「ひとりブレインストーミング」がおすすめです。複数のアイデアが合体して、ひとつの企画になることも多いですから。

ひとつの企画を大切に温めるタイプの方も、「他人がお金を出す価値」をキーワードに自問自答しながら、少しずつ内容を修正していってください。

文/長嶺超輝 協力/しらくまももこ