編集者・デザイナー・DTPオペレーター・イラストレーター・カメラマン・校正者…… 数々の専門家の協力を得て、責了・校了(校正終了)となった完成稿は、印刷所へ入稿されて、いよいよ書籍へと成形されていきます。
ここで初めて登場した印刷所ですが、じつは、校正用のゲラを作っているのは印刷所だったりします(最近はDTPオペレーターが作成する場合もあるようですが)。 存在感を押し出さずに、さりげなく高度な仕事を仕上げていく縁の下の力持ち。それが印刷所の誇る美学なのだと、勝手ながら紹介させていただきます。 印刷・製本の大型機械を動かし、大量の紙を取り扱う印刷所の仕事は、重労働で危険とも隣り合わせです。また、版元からの発注に的確に応えてみせたり、小さな印刷ミスにも気づいたりする繊細さも求められます。
印刷するにあたっては、まず、どんな大きさ、どんな質感の紙に刷るかを決定する必要があります。一般的に見かける単行本の大きさは127mm×188mm(通称:四六判)、文庫本は105mm×148mmのA6判(≒はがきサイズ)です。
書籍の中身に使われる用紙は、たいてい「中質紙」と呼ばれる種類で、標準的な品質のものです。ただ、写真集や画集では、もう少し上質な用紙が使われるでしょうし、一方では光文社ペーパーバックスなど、再生紙の積極採用で知られるシリーズもあります。
表紙は大きく分けて、堅い板のような「ハードカバー」と、くねくね曲がる厚紙の「ソフトカバー(ペーパーバック)」がありますね。 現代的な書籍表紙の主流はソフトカバーですが、大学の研究者による著書など、権威や重厚感のオーラをまとわせるならハードカバーが一番ですね。 こういった紙の物理的な風合いや味わいだけは、電子書籍にはマネできません。何かこだわりや好みがあれば、担当編集者を通じて指定してみましょう。
初版部数ぶんの本文ページや表紙・帯の印刷が終わったら、次はこれらを書籍の形に組み立てる製本の工程へ移ります。現代では、かなり機械化・自動化が進んでいるようですね。版元からの製本指示を高いレベルで実現する、コンピュータによるオペレーション技能が物をいうところです。
絵と文/長嶺超輝 協力/しらくまももこ