「なにげなく書店に立ち寄ったら、面白そうな本があったので買ってみた」
こんな時、人は何を見て「面白そうだ」と判断しているのでしょうか。
「当店のベストセラー」などの掲示や、「書店員のおすすめ」といったポップも参考になるでしょう。
しかし、直感に訴えかける力が強いのは、本のタイトルではないでしょうか。
タイトルには「その先」を読ませる力が欲しい
出版企画書を作るにあたっても、タイトルは非常に重要です。
未来の読者が、そして、企画を判断する編集者が、思わずその先を読みたくなるようなタイトルを付けることができたら、出版の可能性はグンと上がります。
ただ、ベテラン編集者でも、プロのコピーライターでも、たった1行で人の心を動かすのは至難の技。
それを承知の上で、企画の本質、そして魅力が伝わるタイトルを考えてみましょう。
タイトルを見た瞬間、本のジャンルがわかる
まず、タイトルで伝えたいのは、本のジャンルです。
タイトルを見ただけで、
ビジネス書なのか、 健康本なのか、子育ての本なのかがわかる。
さらにビジネス書なら、
マーケティングの本なのか、マネジメントの本なのか、起業の本なのかがわかる。
以上のことを踏まえた上で、あなたの企画の特徴や個性、新しさがわかる言葉を添えて、読み手の好奇心を刺激しましょう。
タイトルだけでは伝えきれない情報は、サブタイトルやキャッチコピーで訴求することもできます。
タイトルに情報を詰め込み過ぎると、何をテーマとした本なのかわからなくなるので、企画のジャンルがはっきりとわかる、シンプルなキーワードを使い、それを目立たせましょう。
読者ターゲットによってキーワードは変わる
良いタイトルの例として、企画のたまご屋さんの商業出版支援サービス「ほんたま」への応募を通して出版された本『“こわい”がなくなる投資1年生の教科書』(佐藤彰/自由国民社)を紹介します。
まず、タイトルに「投資」という言葉が入っています。これを見れば、投資の本であることが一目でわかります。
次に「1年生」という言葉も入っているので、投資初心者向けの本であることがわかります。「1年生」は、初心者向けの本でよく使われるキーワードです。
さらに「“こわい”がなくなる」とあります。
このフレーズは、「投資に興味はあるけれど、よくわからないし怖い」という初心者の気持ちに寄り添った上で、「でも、ちゃんと教えるから大丈夫!」と安心させる役割を持ちます。
このように、考え抜かれたタイトルは、たった20字程度でジャンルと読者ターゲットを明確に表し、「基礎からやさしく教えます」というメッセージも伝えることができます。
一方、同じ投資の本でも、「1億稼ぐ」という内容だと、タイトルにはもっと強い言葉や煽り文句が選ばれるでしょう。
また、中級~上級者向けの本なら、「ファンダメンタルズ」などの専門用語が入ることもあります。
ですので、タイトルを決めるときは、実は読者ターゲットの選定が重要になります。ターゲットによって、直感を刺激する言葉は違ってくるからです。
キーワードは書店で探そう
タイトルが決められなくて迷った時は、書店に出かけて類書を研究しましょう。
あなたが狙っているジャンルで売れている本や、売り場で目立っている本を探し、どんなタイトルが付いているのかを確認します。
そして、なぜこのタイトルが魅力的なのか、お客さんが手に取りたくなるのかを考察してみます。
中には、何度も繰り返し使われている、手垢のついた表現もあるかもしれません。
しかし、何度も使われているということは、それだけ売れる言葉、人の心を動かす言葉である証拠です。
もし、そんな売れる言葉と自分の企画の相性が良さそうなら、ほんの少し、スパイスとして、本のタイトルに取り入れてみるのもいいかもしれません。
うまくいけば、思わぬ化学反応が生じるかもしれませんよ。