本のキャッチコピーは、通りすがりの人に、インパクトを与えるためにあります。
印象に残る言葉を使い、感情を揺さぶって、書店に入ったお客さんの足を止めます。
この記事では、企画のたまご屋さんの商業出版支援サービス「ほんたま」への応募を通して出版された本の中から、本のキャッチコピーの付け方・考え方に役立つ例を3つ紹介します。
1.気持ちや行動のハードルを下げる
◆『ダブルワークからはじめる カフェ・コーヒーショップのつくり方』(市川ヒロトモ/ぱる出版)
この本のキャッチコピーは、『背伸びをせずに「ゆる~く」成功』です。
さらに、手書きのような書体の「脱サラ不要!」という文句や、丸で囲んだ「日本一堅実で敷居の低いコーヒー経営の入門書」という文も添えられています。
・自分みたいな普通の会社員でも、カフェが経営できるのだろうか
・おいしいコーヒーを淹れるには、長年の修行が必要なのでは
・もし、失敗したら、多額の借金が残るのでは
このような読者の悩みや不安を受け止めて、優しい言葉で語りかけ、警戒心を解くキャッチコピーが添えられています。
初心者向けの本を手に取る人は、「難しいのでは」「自分にもできるのだろうか」「続けられるかどうか心配」という不安を抱えているものです。
そんな不安を払拭するために、「ラク」「簡単」「誰でもできる」など安心感を与える言葉を用いて、心理的なハードルを下げます。
2.不安や恐怖をあおる
◆『医師から「痩せなさい」と言われたら最初に読む本』(土山智也、 土山奈央美/扶桑社)
この本のキャッチコピーは、『糖質制限は効果絶大。ただしやりすぎると死ぬ!』です。
「死ぬ!」という言葉だけでも恐ろしいのに、ほかの字よりも大きく目立たせ、さらに物々しさを際立たせています。先に紹介した、ゆるいキャッチコピーとは真逆です。
糖質制限は、ダイエットに有効な方法として広く知られ、今ではすっかり定着しました。
しかし、「死ぬ!」という強い言葉で警告されたら、「実は危ない方法?」とか、「痩せても体に悪いのかも」などと不安になり、信頼感が揺らいでしまうでしょう。
このように、不安を引き起こす言葉で読者の常識に疑問を呈し、「何とかしなくちゃ」という気持ちに駆り立てるキャッチコピーは多いです。
「死ぬ!」ほどの強い言葉を使うには覚悟が必要ですが、「危ない」「間違いだらけ」「それって本当?」くらいの言い方なら、キャッチコピーに取り入れやすいでしょう。
3.問いを投げかけ、考えさせる
◆『一瞬で心が整う「色」の心理学』(南涼子/青春出版社)
この本のキャッチコピーは、『Q.仕事・勉強の公立を下げるやってはいけない部屋はどれ?』です。
「やってはいけない部屋」は、実際のキャッチコピーでも赤字で強調されていますが、この言葉は、先の例と同様に不安を煽る役割を果たしています。
人はなぜか、問いを投げかけられると、答えを探したくなる生き物のようです。
電車内によくある学習塾の広告で、難関中学の入試問題が紹介されていると、受験生でもその親でもないのに、一生懸命答えを考えてしまう人も多いのではないでしょうか。
そのような脳の仕組みを知った上で「問い」を投げかけ、本に注目させるキャッチコピーも、よく見かけます。
・成功者はなぜ〇〇をするのか?
・〇〇に必要な準備とは?
・実は〇〇は▲▲だと知っていますか?
など、問いかけのパターンもいろいろあります。
この手法は、問いの答えが意外であるほど効果的です。逆に、答えが簡単だったり、常識の範囲内に収まる程度だと、がっかりされてしまうので注意しましょう。
キャッチコピーで、行動のスイッチを入れよう
キャッチコピーには、読者の行動を促す力が必要です。
やろうと思っているのにできていないこと、やるべきだと気づいたことに対し、第一歩を踏み出してもらうよう、感情を揺さぶります。
・今がチャンスだ
・何とかしなくては
・周囲に一目置かれたい
・もっと私らしく生きたい
このような、読者が隠し持っている剝き出しの欲望にアプローチできれば、キャッチコピーが「刺さった」状態になります。
あなたの感情を揺さぶる言葉、欲望に火をつけるキーワードは何ですか?
まずは、それを自分に問いかけ、カッコつけずに直視しましょう