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2022 年 02 月 08 日

「築地ホテル館」物語 日本初の外国人専用本格的ホテルをつくった幕末維新の男たち

著者:

永宮 和

出版社:

原書房
ノンフィクション

悲運のホテルを背景に描く、幕末維新の知られざるドラマ

日本初の本格的ホテルをご存知でしょうか。あまり知られていませんが、慶応4年に開業した、「築地ホテル館」です。外国人専用のホテルで、築地の外国人専用居留地に隣接して建設されました。

しかし、当時は、江戸の開港前。築地を活動拠点とする外国商会がほとんどなく、ほどなく廃業に追い込まれてしまいます。さらに、明治5年に起きた「銀座大火」により、ホテルの建物自体もあっさりと焼失しました。築地ホテル館に関する資料も、その多くを焼失。謎に包まれているホテルなのです。

本書は、築地ホテル館から始まる新時代の建築を軸に、幕末から明治にかけて時代を描くノンフィクションです。

ホテルを建てることになったのは、日本独特の襖を隔てて他人が寝泊まりする旅館が外国人にとっては受け入れがたいものだったのが理由です。欧米列強からの圧力により、幕府が築地ホテル館の建設を決めました。しかし、当時の幕府は、もはや破産状態です。そこで、土地を無償提供し、民間から希望事業者を募ることになりました。その民間事業者は株制度で資金を集め、ホテルを建てて経営していくという手法をとることになります。そこで、名乗りを上げたのが清水屋(現在の清水建設)棟梁の二代清水喜助でした。

喜助は築地ホテル館の経営不振により、大きな負債が残ったものの、さまざまな仕事を請け負うことになります。その中の一つが、日本初の銀行、第一国立銀行の建築です。その総監役が近代経済の父と言われる渋沢栄一でした。渋沢栄一は、喜助の仕事を高く評価し、さまざまな建築、改築を依頼することになります。

歴史を彩った人物や建物が生き生きと詳細に描かれており、その情景を思い描くことができます。建物だけでなく、銀行や経済の歴史、ビジネス、文化など、多方面から好奇心を満足させられるのではないでしょうか。(中山寒稀)

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「築地ホテル館」物語 日本初の外国人専用本格的ホテルをつくった幕末維新の男たち