いつ、だれが罹患するかわからないメンタル疾患。がんばりすぎない家族の支え方
長引く新型コロナウイルスの影響や環境の変化、経済的な不安により、メンタル疾患に罹る人が増加傾向にあるそうです。自分や家族には無関係と思うなかれ。メンタル疾患は、いつ、誰がかかるかわからないのです。
本書の著者は、知的障がいやメンタル疾患を持っている人やそのご家族を支援するカウンセラー、橘いづみさんです。もともと著者は、ご主人、3人のお子さんと暮らす、ごく普通の家族でした。しかし、著者が産後間もないころ、突然、ご主人が「うつ病になった」と言い出します。それから現在に至るまでの18年間、著者はメンタルの病気を患うご主人を支えてきました。
そんな著者の経験から、身近な人にメンタル疾患が疑われる場合の疾患別の対処方法やそれを支える自分を整えるセルフケアを紹介しています。
「はじめに」で著者は次のように書いています。
“本書は「あなたが笑顔になる」をコンセプトに、メンタル疾患を抱える方々との接し方、そして、彼・彼女らを支えるあなた自身の心のあり方、活用したい制度などをエピソードと共にご紹介するものです。”
本書で語られているのは、うつ病、双極性障がい、度重なる自殺未遂やギャンブル依存、大黒柱が働けなくなったことによる生活の困窮など、ご主人とそれを支えてきた著者の18年間のエピソード。なかなか壮絶なエピソードなのですが、悲愴感はなく、あっけらかんと綴られています。そして、本書でたびたび登場する言葉は「笑顔」。今が苦しくても、必ず未来は拓けるといっています。
ある時、うつ状態だったご主人が突然「パチンコでも行こうかな」と言い出しました。気晴らしに外に出ることは良ことだと思い、家計からお金を渡し、送り出したそうです。帰宅したご主人は、生き生きとした表情で、「今日は負けたけど、あの台は明日、大勝ちする」と翌日も行きたいと著者に頼み込みます。翌日も、その翌日も。著者は、嫌な予感がしつつも、お金を渡し、送り出していました。その結果、ご主人は自宅ローン返済のために工面していたお金に手を付けてしまいます。大黒柱が休職中で、火の車の家計。それは著者が身を削るようにして貯めたお金です。生活費を節約しようにも、育ち盛りのお子さんの食費はこれ以上削れません。
かくして、著者は強制ダイエットをするはめに。朝は朝食なし、昼はおにぎりのみ。そのダイエット効果は抜群だったといいます。
あっけらかんとエピソードを語る著者も、かつてはご主人の死を想像するほどに、追いつめられていたそうです。ご主人もまた、著者が死ぬか、自分が死ぬかと想像していたといいます。それでも著者がうつ病にならなかったのは、「どうしようもなくなったら、がんばらずに逃げる」を選んできたから。メンタル疾患の当事者も周りで支える人も、死の沼から這い上がるためには、「がんばらない」ことが一番だと言っています。
本書では、著者の知的障がい、メンタル疾患を抱えた方に対する相談業務のエピソードも紹介しています。
(*状況や症状などは、架空のものに改変されています)
あとがきの最後に書かれている「道は必ず拓けます」という言葉は、支える人だけでなく、メンタル疾患に悩む当事者の心にも響くのではないでしょうか。(中山寒稀)
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