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2021 年 03 月 02 日

GOOD DESIGN FILE 愛されつづけるデザインの秘密

著者:

高橋 克典

出版社:

遊泳舎
ビジネス

デザインが企業を育て、デザインが企業を救う

本書で紹介されている47のデザインは、どれも「知ってる!」「見たことがある」と思うようななじみがあるものばかり。著者によると、優れたデザインの多くは長い歴史を有しており、長期間にわたって高い利益を企業にもたらすことになるのだそうです。市場の認知度が高く、派生製品の開発が容易であり、開発費や製作コストを抑えることにもつながっていくといいます。

本書の著者は、「シャルル ジョルダン」「カッシーナ・イクスシー」のほか、数々の外資系企業の経営に携わってきた高橋克典さん。デザインの力によって一人当たりの労働生産性を飛躍的に上げる経営術を紹介しています。

たとえば、気軽に持ち運べて、どこでも好きなときに音楽が聴ける「ウォークマン」。その開発のきっかけは、ソニー創業者であり、当時の名誉会長だった井深大氏の「良い音楽を移動中でも聴きたい」という願いだったそうです。その完成した試作品が好評で、商品化されることになりました。

部屋でカセットレコーダーやレコードプレーヤーなどを使って聴くのが常識だった時代に、ウォークマンの思想があまりに突き抜けていました。そのため、消費者が追いついていけず、発売当時は、売り上げが芳しくなかったそうです。しかし、そういう商品であっても、その思想が浸透し、納得してもらえれば、他の追随を許さない絶対的な存在になれると著者は言っています。そのため、もし無茶だと思うようなアイデアを思いついたら、チャンスかもしれません。今の時代、ある特定の人に深く刺されば、SNSを通じて、瞬時に世界に広まることもあり得ると著者はいっています。

また、ボトルに特徴があるのは、コカ・コーラ。「コンツァーボトル」と呼ばれる独特の形は見ただけでも、コカ・コーラだとわかりますね。このボトルは、コカ・コーラの人気の高まりによる模造品対策として考え出されたものです。「暗闇で触れても、地面に砕け散っていてもコカ・コーラだとわかるような特徴的なボトル」として誕生しました。

さらにコカ・コーラのロゴデザインも“Coca Cola”と2つのCに特徴があり、文字数が同じで近いフォルムの文字を連続させることで、視認性を極限まで高めているそうです。

デザインの力は、企業や時代に多くの与えてきました。著者は、経営の根幹にデザインを置く「デザイン経営」を強く勧めています。特に研究開発費や優秀な人材を採用することが容易でないなど、不利な条件がそろっている規模の小さな会社には、デザイン経営が向いているそうです。デザインでイノベーションを起こし、長期間にわたる安定的な成長を実現させることが可能だといいます。

本書では、身近にある商品のデザインが誕生した秘密から、デザインの重要性、そして、消費者の心を動かすデザインのポイントを紹介しています。製造業やデザインに携わっている人はもちろん、新たなビジネスの発想を得たい人におすすめです。また、デザインにまつわるストーリーは読み物としても楽しむことができます。(中山寒稀)

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