大切なことは身近にある。元気がもらえる詩集
本書には、著者の村上有香さんが9歳から20歳までに書き溜めた詩の中から、選りすぐりの66編が収録されています。
なぜ、「9歳から」なのか。実は、著者が詩を書くようになったのには、あるきっかけがあったのです。お母さんによると、著者はダウン症で、小学校低学年の頃は、自分で思ったことを書くことが難しかったといいます。日記を書かせていたそうですが、その日の出来事を羅列するだけで、「思い」や「考え」を表現することはほとんどありませんでした。
そんな時、お母さんがテレビで、「子どもは身近なものをタイトルに与えると、とても面白い文章を書く」という言葉を耳にします。そこで、著者に大好きな犬のこうちゃんについて尋ねると、日記とは別人のような、リズミカルな言葉が出てきたそうです。現在は、毎日、大学ノートに好きなことをびっしりと書き込んでいるとのこと。
本書のなかでも、気になった詩のひとつがこれ。著者が中学部3年生の時に書いたものです。
“私の壁 お母さんは愛があるから怒るんでしょう? 私は愛があっても怒れない 脳の中では本気で怒る けど、口には出せない あー脳に壁ができる 壁ができるとしゃべれなくなる がまんしたら バーン 私がはれつする”
著者の詩は、笑ってしまうものから、心温まる詩、思わず「わかる!」と思うものまで、さまざま。テーマはすべて、身近にあるものばかりです。
また、表紙のほか、色鮮やかな挿絵を描いているのは、ダウン症の伊藤美憂さん。企業のカレンダーや広報誌表紙などにも作品を提供しているそうです。
コロナ禍で不安な毎日に、どうしてもピリピリしがち。そんな時、素直で力強い言葉で綴られた詩は、優しい気持ちになれる一冊になっています。身近にありすぎて気が付けない、大切なことがわかるかもしれません。心に元気が足りない人におすすめです。(中山寒稀)
【ご購入はこちら▶】弱いはつよい
【おすすめの記事▶】1は赤い。そして世界は緑と青でできている。「文字に色が見える」共感覚の話
【詩・エッセイ・絵本を出版するなら▶】出版企画をお持ちの方へ
【本を出版したい人のために▶】セミナーのご案内
弱いはつよい