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2021 年 02 月 13 日

弱いはつよい

著者:

村上有香、伊藤美憂(絵)

出版社:

風鳴舎
詩集

大切なことは身近にある。元気がもらえる詩集

本書には、著者の村上有香さんが9歳から20歳までに書き溜めた詩の中から、選りすぐりの66編が収録されています。

なぜ、「9歳から」なのか。実は、著者が詩を書くようになったのには、あるきっかけがあったのです。お母さんによると、著者はダウン症で、小学校低学年の頃は、自分で思ったことを書くことが難しかったといいます。日記を書かせていたそうですが、その日の出来事を羅列するだけで、「思い」や「考え」を表現することはほとんどありませんでした。

そんな時、お母さんがテレビで、「子どもは身近なものをタイトルに与えると、とても面白い文章を書く」という言葉を耳にします。そこで、著者に大好きな犬のこうちゃんについて尋ねると、日記とは別人のような、リズミカルな言葉が出てきたそうです。現在は、毎日、大学ノートに好きなことをびっしりと書き込んでいるとのこと。

本書のなかでも、気になった詩のひとつがこれ。著者が中学部3年生の時に書いたものです。

“私の壁

お母さんは愛があるから怒るんでしょう?

私は愛があっても怒れない

脳の中では本気で怒る

けど、口には出せない

あー脳に壁ができる

壁ができるとしゃべれなくなる

がまんしたら

バーン

私がはれつする”

 

著者の詩は、笑ってしまうものから、心温まる詩、思わず「わかる!」と思うものまで、さまざま。テーマはすべて、身近にあるものばかりです。

また、表紙のほか、色鮮やかな挿絵を描いているのは、ダウン症の伊藤美憂さん。企業のカレンダーや広報誌表紙などにも作品を提供しているそうです。

コロナ禍で不安な毎日に、どうしてもピリピリしがち。そんな時、素直で力強い言葉で綴られた詩は、優しい気持ちになれる一冊になっています。身近にありすぎて気が付けない、大切なことがわかるかもしれません。心に元気が足りない人におすすめです。(中山寒稀)

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