摩訶不思議でカラフルな共感覚の世界とは?
現在、大学生の本書の著者、望月菜南子さんは、大学の6号館と8号館でどちらにいるのか混乱することがあるそうです。その理由は、色が似ているから。「6」は紺色に近い青紫色で、「8」は「6」の色の絵の具に少し白を足して薄くしたような色。建物や壁の色ではありません。数字の色です。著者は「共感覚」の持ち主なのです。
共感覚とは、1つの刺激に対して2つ以上の感覚を感じるという知覚様式。様々なタイプがあり、音に色を感じる「色聴」、文字に色を感じる「色字」、音に味を感じたり、味に形、痛みに色を感じることもあります。その中で、著者が持っているのは、色字共感覚とのこと。
著者は意図的に文字と色を結びつけているのではなく、何も考えていなくても、色が見えるといいます。逆に色のついていない文字を見ることができません。そして、電話番号や人の名前を色で覚えられる反面、「6」と「8」のような、似ている色だと混乱してしまうこともあります。
本書は、そんな共感覚を持つ著者のカラフルな日常と、ちょっと不思議な共感覚の世界を知ることができます。
著者にとって印象深いエピソードに、鍵盤ハーモニカがあります。幼稚園で鍵盤ハーモニカの練習が始まった時、まだ文字が読めない園児のために、先生が鍵盤に色のついたまるいシールを貼ってくれました。「ド」には赤、「レ」には黄色、「ミ」には緑……。そして、楽譜には同じ色のシールを自分で貼っていきます。そこで困ったのが著者。
「ド」はオレンジと茶色が混ざった色なのに、赤いシールを貼る。見えている色と一致した「レ」はいいけど、ピンクの「ミ」には緑色のシールを貼らなければいけない。
他の園児はおしゃべりしながら作業しているのに、著者には全くそんな余裕はなかったそうです。見えている色と別の色を貼らなければいけない作業は、苦行のようだったとのこと。
そもそも、共感覚で文字に色が見えるのであれば、もともとのインクの色は見えないのでしょうか。
視覚的にはもともとのインクの色の方が強く見えるものの、共感覚によって見える色のほうが印象的で頭に残りやすいと著者は言っています。共感覚者によって見え方は異なりますが、著者の場合は「その字の本当の色を知っている」という感覚で見える色を感じているのだそうです。
カラフルで不思議な「共感覚」の世界。実際に見ることはできませんが、想像するだけでも、ちょっとワクワクしてきますね。(中山寒稀)
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1は赤い。そして世界は緑と青でできている。「文字に色が見える」共感覚の話