青は、神秘と霊性の色
ポルトガルの伝統的なアートとして有名なのがアズレージョ。タイルに白をベースに青い顔料で描かれた絵のことで、民家の壁や教会など、ポルトガルの町のいたるところで目にすることができるそうです。
そのアズレージョに魅入られたのが、本書の著者。画家であり、版画家の白須純さんです。アズレージョの研鑽を積むなかで、著者はその顔料である青という色に興味を持つようになりました。太古の時代から、人間にとって青は特別な色だったからです。
“青を人が運び、神聖なものに捧げ、取引が成され、陸と海を渡り、顔料をめぐって駆け引きや戦争があり、富の象徴とされ、夏の風物詩となり、その時代と社会、交差する人間模様を複雑に織り成し、さまざまな形で歴史を彩りました。”
本書では、さまざまな時代の芸術や儀式、戦いなどに用いられた青と人間の物語が綴られています。
メキシコにあるマヤ遺跡のセノーテでは、かつて雨乞いの儀式が行われていました。コーパル(香)を焚き、その鉢とともにいけにえとなる人を泉のなかに投げ落としたといわれています。いけにえは、全身をマヤブルーで青く塗られ、心臓を切り抜かれて、雨神チャークに奉じられました。
ウィートン・カレッジ考古学部のディーン・アーノルド教授によると、「マヤでは聖職者や儀式にとって、青は重要な色だった」と言っています。
いけにえに塗られるマヤブルーは、とても耐久性のある堅牢な青なのだそうです。9世紀ごろに描かれたカカシュトラやボナンパックの壁画にも使われており、時を経て、今もなお鮮やかな青を発しています。
そのマヤブルーはパリゴルスカイトというマグネシウムとシリカを成分とする粘土性鉱物とインディゴを混ぜ、そこにコーパルを第三の調合剤として加わえたという説があります。セノーテの泉の底には、マヤブルーに欠かせない成分であるパリゴルスカイトの鉱脈があり、そこにマヤブルーを塗ったいけにえを定期的を落とすことで、さらなるマヤブルーを生成させたと考えられているのです。セノーテの泉の底にたまったマヤブルーはくみ上げられ、壁画や焼き物に使われました。
本書では、時に雄大に、時に残酷に、人間の青をめぐる歴史が綴られています。
はるか昔から受け継がれた青という色が持つ、神秘と霊性を感じる一冊になっています。アートに興味ある人ばかりではなく、人の文化の歴史に興味がある方にもおすすめです。
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青の儀式