悩みを解決するヒントは、ネズミが知っている
「ネズミ」には、どんなイメージをお持ちでしょうか? ハムスターなどの可愛らしいペットもいますが、どちらかというと無表情で何を考えているかわからない印象のあるネズミ。本書の著者、篠原かをりさんによると、実はネズミは表情豊かで、人間とは共通点がたくさんあるといいます。
本書では、人間味ならぬ、ネズミ味(?)を知ることで、人間が抱えている悩みや生き方と新たな目線で向き合います。
人間にしかないように思える感情に、妬み、嫉みがあります。著者によると、ネズミにも人間と同じように妬むという感情があるそうです。ちなみに、妬みとは、自分の幸福が損なわれているわけではないのに、他者の幸福を見て自分のことを不幸と感じてしまうこと。
マウスを拘束してストレスをかける実験では、1匹で拘束されるよりも5匹でストレスを受けている方がストレスは軽減。逆に、1匹のマウスが拘束され、残りの4匹のマウスが自由でいると、拘束されているマウスのストレスは増大しました。マウスも他者が同じ嫌なことに耐えている姿に慰められ、自分だけが嫌な思いをしていると、不公平感があり、ストレスを感じるのです。
悪いイメージのある嫉妬ですが、著者によると必要のない感情ではないそうです。嫉妬という感情は、時に起爆剤として奮起するきっかけにもなります。大切なのは、嫉妬心とうまく付き合っていくことがたいせつとのこと。
後悔という感情も人間だけのもではありません。ネズミも人間と同じように間違った選択をすると後悔をします。
4つの梯子を登ると、それぞれ味の違う餌が出てきて食べられるという迷路を使った実験があります。梯子を登ったところで餌が出てくるまでの時間がわかるので、ラットは餌が出てくるのを待つか、他の梯子を登るかという選択ができるというもの。
ラットは、好きな餌だと長い時間待つことができますが、待ち時間が長すぎると諦めてほかの梯子を登りにいきます。ところが、好きな餌を諦め、そうでもない餌の待ち時間がもっと長かったときはどうするか。間違った選択をしたことに気づいたラットは、元の梯子を見て、食べ損ねた好きな餌のことを考えていたそうです。後悔したラットはその反省を生かし、次の梯子では待てなかった長い時間を待ち、出てきた餌を急いで食べたとのこと。
後悔したとき、目の前の選択肢にとらわれるラットもいれば、次の選択肢を考えているラットもいます。どちらを選んでもいいことも悪いこともあるのが人生の選択。自分が選んだほうが正解と信じ続ける心のみが、選んだ道を正解にできるのかもしれないと著者はいっています。
また、困っている仲間を助けるのは、人間もネズミも一緒です。
2週間ペアで飼育したラットのうちの1匹を、もう片方のネズミから見える檻に監禁。自由なラットには好物のチョコチップを与えています。そのままにしておけば好物を独り占めできるにもかかわらず、自由なラットは必死に解決策を探り仲間を助け出したそうです。もちろん救出後、チョコチップは分け合って食べました。
チョコチップのように、親切にすることが実利をもたらすとは限りません。著者は、それでもネズミも人間も親切にすることはやめないだろうといいます。人間にとって「親切にしたい」欲求と「恩返しをしたい」欲求がセットになっているから。
人間の心理実験では、自分が親切にされた人は、他の人にも多くの親切な行為をするようになったそうです。そうして自分がした親切は、知らないところで広がっているかもしれません。人間が心の赴くままに手を差し伸べ続けることがこの世の優しさの総量を増やすと著者は考えています。
妬みや嫉み、後悔などのネガティブな感情から、仲間を見捨てない優しさまで、ネズミと人間が意外なほど似ていることがわかります。どうも人間は複雑すぎるようです。ネズミを通して人間を見てみたら、もしかしたらシンプルに大切なことが見えてくるかもしれませんね。(中山寒稀)
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