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2019 年 04 月 25 日

ホスピスナースが胸を熱くした いのちの物語

著者:

ラプレツィオーサ 伸子

出版社:

青春出版社
医療エッセイ

最終章を生きる素敵な人生の物語

本書の著者は、アメリカで在宅ホスピスナースを務める女性です。ホスピスとは、余命6カ月以内と診断され、かつ積極的な根治治療や延命治療を行わない人に、その寿命が安らかに尽きるまでを、身体的、精神的、社会的、スピリチュアルな面から全人的にサポートするケアのこと。つまり、ホスピスケアを受ける人は、自分の人生が最終章にいることを自覚しているのです。

そんな著者がホスピスナースをしていて気になるのが、その人が幸せかどうかだといいます。

“長い間、大勢の人を見送ってきて、コップに水が半分だけ入っているのを見て、「半分が満たされている」と思う人は、「半分が空」と思う人よりも、幸せの度合いが高いような気がするのです。それは、コップに半分入っている水を見て安心するか、半分しか残っていない水を見て不安になるかの違いなのかもしれません。

そして、コップの水は減っていくけれど、今残っている分を愛で楽しめたら、その水の味は何倍にもおいしくなるのです。”

ホスピスチームは、残っているコップの水を少しでもおいしくできるように手伝い、本人も家族も心安らかに最後の一滴を飲み干すことができた時、この仕事をしてきて、よかったと感じるのだそうです。

著者が担当した人の中には、生まれる前からホスピスケアを受けることがほぼ決まっていた患児がいました。エミリーと名付けられた患児は、左心低形成症候群という心臓の先天性疾患に加え、肺リンパ管拡張症やターナー症候群、その他の合併症があったのです。両親は妊娠中から専門医やパリアティブケアチーム(重症で特に予後が悪く、治療の効果が期待されない患児をサポートする緩和ケア専門チーム)と何度も話し合い、無事に生まれたら、あとはただ、苦しまずに命を全うさせてあげたいという結論にたどり着いていたのです。

両親は覚悟をもって、生まれてきたエミリーを愛で包み、エミリーも少しでも長く、少しでも多く、彼女を抱く喜びを二人に捧げようとしました。そうして、余命数時間かもしれないという予想を超えて、エミリーは16日2時間10分の短い人生を閉じました。

著者はエミリーが「人はなぜ生まれてくるのだろう? 何のために生まれてくるのだろう?」という永遠の問いにひとつの答えをくれたといいます。

“愛されるため、愛するとはどういうことかを教えるためなのではないか、ということであり、それが正解のひとつだとしたら、彼女はまさに、天命を全うしたのです。”

本書を読むと、ホスピスは「死のため」のものではなく、最後まで自分らしく生きるためのケアということを実感できます。日本でも在宅ホスピスが注目されていますが、なかなか普及しないのが現実。本書を読むと、在宅で看取ることの考え方が変わるかもしれません。(中山寒稀)

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ホスピスナースが胸を熱くした いのちの物語