その昔、学校で国語の時間に書かされた作文は、なぜあんなに難しかったんでしょう?
夏休みの読書感想文が苦手な子どもが多いのは、どうしてでしょうか?
原因はいろいろとありえますが、きっと
「原稿用紙に書かされているから」という要素も かなりのウェイトを占めているように思います。
原稿用紙は、その構造上、頭から書くことが義務づけられています。まとまった文章をつくるにあたって、これは非常にキツい縛りといえましょう。
映画『ショーシャンクの空に』や『グリーンマイル』の原作者としても知られる、小説家の
スティーヴン・キング氏は、作品の最初のワンフレーズを練るのに数ヶ月から数年かけることもあるそうです。
なぜなら、原稿を書くときの最難関エリアこそ、ズバリ、冒頭だからです。
原稿の冒頭とは、フラットな状態の読者に関心を抱いてもらい、こちらの世界へ引きずり込むためのツカミなのです。しかも、原稿用紙はまっさらで、何を書けばいいやら 手がかりがない。
こんなもの、難しいに決まっています。
クイズ番組だったら、第1問からいきなり「そんなもん知るか!」とクレームをつけたくなる難問奇問が出題されるようなもんです。すなわち、原稿を書くという行為は、ゲームバランスの設定が最初からおかしいんですよ。
望むところです。ならば、こっちから出題順を変更してやりましょう。
原稿の冒頭こそ、全部書き上げるまで残しておいて、最後の集大成で 満を持しての筆入れ! ぐらいの意識で、ちょうどいいのです。
冒頭の後回しは、原稿用紙でやろうとすると厳しいですが、私たちは幸い、パソコンやスマホを使って書くことができます。
原稿の書き出しで、いきなりつまずかないでください。悩んで当たり前です。最初が一番難しいんですから。
つまずいたって、いいじゃないか。書き出しだもの。
原稿なんて、
書きやすいところからサクサク書いていけばいいんです。順番がおかしければ、後でいくらでも納得いくまで並べ替えましょう。ズルではありません。それが、コンピュータを使える時代の著者に許された特権なのです。 〔長嶺超輝〕
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