ある対象を「好きな気持ち」を持つことは大事ですし、その情熱こそが表現行為の強い推進力となります。
しかし、情熱だけでは、出版ができないことも、また確かな現実です。
あなたの企画は、少なくともどれくらいの人々が興味を持ち、そのうち、どれぐらいの人が買ってくれるのかを、冷静に事実ベースで考えてみましょう。
たとえば、スポーツの本でしたら、野球やサッカーであれば、ファンがたくさんいそうですが、競技人口は意外と少ないのです。
多くの人にとって、プロ選手の試合を観るのは好きだけど、自分でやるかどうかは別の問題です。
たとえば、「平成28年社会生活基本調査 生活行動に関する結果」によれば、10歳以上の国民が過去1年間に実際にしたことのあるスポーツの割合は以下の通りです。
-
1位 ウォーキング・軽い体操 41.3%
-
2位 器具を使ったトレーニング 14.7%
-
3位 ボウリング 12.7%
-
4位 ジョギング・マラソン 12.1%
-
5位 水泳 11.0%
-
6位 登山・ハイキング 10.0%
-
7位 つり 8.7%
-
8位 ゴルフ 7.9%
-
9位 サイクリング 7.9%
-
10位 野球 7.2%
-
11位 卓球 6.8%
-
12位 バドミントン 6.7%
-
13位 サッカー 6.0%
-
フットサルなどを趣味にしている方々は、見過ごしがちかもしれませんが、実際にサッカーをプレイする人の割合は、野球や卓球、バドミントンよりも少ないのです。
「いや、もっとサッカーをしようよ!」と、現状を嘆いて他人を変えようとしても仕方ありません。
草野球の愛好家も同様で、競技人口がそれほど多くないことを前提に出版企画を立てる必要があります。
出版によって競技人口を増やそうとする努力も、かなり道が険しそうです。
この場合、「サッカーが上手くなる方法」「草野球の上達法」よりも、「ウォーキングで健康になる方法」のほうが、ずっと出版の市場規模が大きいことも見て取れます。
ひととおりの道具を揃えなければならず、しかもひとりではできないチームスポーツは、その事実だけで参加するためのハードルが高くなってしまうのです。〔長嶺超輝〕