2018 年 08 月 23 日

【その6】完成度の高さは大切ですが、高すぎるのも歓迎されません

●原稿執筆●企画立案
「ここは、もう少し詳しく書きたい」
「さらに深く調べたい」
「もっといい表現をしたい」
本の原稿、あるいは企画書の完成度の高さは、「こだわりの強さ」にも置き換えることができそうです。

こだわりが強い方は、素晴らしい資質の持ち主だといえます。
物事を批判的な目で見つめて、改善策を提示し、進めることができるからです。

他人が作ったものを批判し、クレームを付けることなら、多くの人ができます。それほど難しくありません。

一方、自分が作ったものを、正面から批判的に見つめて、さらに突き詰めていくには、「自己否定」と「自己成長(向上心)」が必要です。
その実現のためには、勇気と多大なエネルギーが必要なので、誰にでもできることではありません。

しかし、こだわりの強さを出版企画や書籍原稿にぶつけると、空回りしてしまうことが多いのです。

なぜなら、出版企画には、出版社という相手方がいて、書籍原稿にも編集者や読者という受け手がいるからです。

著者が大切にしている独自のこだわりは、出版社や読者にとって「どうでもいい」ことが少なくありません。

たとえば、独自のノウハウに凝った名前を付けて、「この名前の由来は……」と著者が滔々と語り始めるケースが往々にしてありますが、そんなもの、ほとんどの人は興味がないのです。

ノウハウの名前は、記憶に残りやすくて口に出しやすいのが一番です。その目的に沿ってネーミングを凝るのならば、出版社や読者の利益になります。

それ以外で著者がこだわりを見せるのは「百害あって一利なし」といっても過言ではありません。そのこだわりに時間と労力をかけるぐらいなら、別のことに有効活用してみましょう。

ノウハウのネーミングよりも、より多くの人が、より簡単に真似できて効果が得られる、ノウハウの再現性の高さを突き詰めるべきなのです。

もっとも「このこだわりを捨てるのは、納得がいかない」という方もいらっしゃるでしょう。

そのお気持ち、よくわかります。

しかし、そのこだわりは、個人的な日記やブログの範囲に留めておきましょう。

出版は、著者以外にも、出版社、取次、書店、読者など、多くの利害関係人が絡む表現活動であることを、常に頭の片隅に置いていただきたいです。〔長嶺超輝〕