2019 年 01 月 15 日【その20】「商業出版」と「自費出版」の間には、何がある?
●出版形態
商業出版は、出版費用を出版社が持ちます。
自費出版は、出版費用を著者が持ちます。
このことは前回、ご説明致しました。
ところで皆さんは、「共同出版」という言葉を見聞きしたことはあるでしょうか。
これは、出版費用を著者と出版社とで「共同出資」する出版形態です。
ちょうど、商業出版と自費出版の中間的な位置づけといえるでしょう。
共同出版における費用負担割合は、出版社によって様々です。ただ、著者が数十万円の費用を支払う場合が一般的です。
出版社によっては「協力出版」「カスタム出版」「ブランディング出版」「企画出版」などと呼んでおり、共同出版のネーミングは業界内で統一されてはいません。
特に、「共同出資」である事実が明確にわからない名称の場合、書き手が費用を出さなければならない事実が十分に知らされず、出版業界に詳しくない方が思わぬ損害を被ってしまうおそれがあります。
商業出版のつもりで、原稿をある程度書き進めていて、あとから「お支払いがなければ、うちからは出せません」と編集者から告げられてしまっては、書き手のショックは相当なものです。
実際、このようなケースで、著者と出版社との間でトラブルが起きることが少なくありません。
また、出版社が「コンサルティング費用」などの名目で、著者に事前出資を持ちかけることもあります。
このコンサルティング費用が事実上、出版費用の一部となっていて、実態が共同出版と大差ない紛らわしいケースも見受けられます。
このような場合、『編集者による有料のコンサルティングサービス』と『編集者が業務の一環として通常おこなう企画や原稿の修正提案』との区別があいまいになりがちです。
どのような目的の費用負担なのか、出版社側からしっかりとした説明がなければ、素人は訳がわからないままにお金を払うことになりかねません。
確かに共同出版なら、出版社のリスクが低減されるぶん、出版の可能性は高まるでしょう。
また、商業出版ほどではありませんが、共同出版でも、決して見劣りしない数の書店に陳列してもらえることがあります。
ただし、台の上に積んで陳列される「平積み」や、本棚の中で表紙を手前に立てて陳列される「面出し」など、目立つかたちで棚に置かれる例は、ほとんどありません。
大きな書店の隅に、1冊だけ「棚差し」されていることが大半でしょう。これでは背表紙しか見えませんので、最初からその本をめあてで買いに来た人以外で、存在が認知されることは難しくなります。
それでも、専門ジャンルの棚にちゃんと置いてもらえれば、共同出版の書籍としては上出来です。
そのジャンルに興味のある通りすがりの人によって、偶然手に取ってもらえる機会もあるはずです。
ただし、一方で共同出版の場合は、ジャンル分けがされず、その出版社専用の棚にまとめて陳列される場合も多いようです。こうなると、読者との偶然の出会いにはほぼ期待できません。
もちろん、成人の皆さんであれば、出版社からの説明に納得した上で、共同出版の契約にサインしても結構です。
しかし、もう一息で商業出版できるのに、そこで諦めてしまうのはもったいないです。なぜなら、共同出版よりも商業出版のほうが、大勢の読者と知り合えて、世の中へ影響力を及ぼせるチャンスを秘めているからです。
事前によく調べ、十分な考慮の上で、重大な決断をなさってください。
NPO法人企画のたまご屋さんの「ほんたま」では、商業出版の編集者にのみ、著者候補の皆さまをお繋ぎしています。〔長嶺超輝〕