2018 年 08 月 30 日

【その9】出版企画の差別化(USP)は、どこまで有効か?

●企画立案
ビジネスでも「差別化が大事」だと、よくいわれるように、出版でも「差別化が必要」といわれることがあります。

出版業界を揺るがすような大ベストセラーが出ると、「二匹目のドジョウ」を狙って、ベストセラーの後追いをした類似書籍が出たりします。そのベストセラーが取り上げたテーマや切り口で、新たな顧客層が発掘されることになりますから、後追いの類似書籍もそこそこ売れます。

これも立派な出版戦略です。

ベストセラーのファンがそのテーマをより深く知りたくて、買い集めたりすることもあります。ベストセラーと間違えて買っちゃう人もいます。

しかし、その後、ベストセラー追随のテーマで類似書籍が出すぎれば、需要を供給が上回る飽和状態になってしまい、やがて徐々に売れなくなっていくのです。顧客の間で「飽き」が来てしまうのも一因です。

そこで、重要となるのが「差別化戦略」です。USP(Unique Selling Proposition)と呼ばれることもあります。

差別化戦略とは、従来品との「違い」を出して、独自の居場所を築き上げて生き残りを図る方法です。

従来品より優位にあるかどうかは問いません。ただただ「違い」を出すのです。

たとえば、読者のターゲットを絞り込んで、そこに当てはまらない人は潔く切り捨て、当てはまる人の心や記憶に深く刺さるタイトルを提示することも有効です。

また、課題を解決するノウハウ(方法)を説明する本でしたら、ノウハウから得られる利益(ベネフィット)に違いを出すことがあります。

たとえば、部屋の片づけに関するノウハウ本は昔からありましたが、それを「断捨離」と銘打つことで、新しいライフスタイルとして提示することもできますし、「人生がときめく」と大きく出ることで、今まで部屋の片づけに強い関心が無かった層まで広く取り込むこともありました。

しかし、「違い」ばかりに頭を悩ませていると、ほとんど潜在顧客がいないところをターゲットにして出版し、失敗をおかしてしまうかもしれません。

著者のあなたが、企画の差別化に振り回されるぐらいなら、出版企画を出す前にあなた自身が何かわかりやすい成果をしっかり出して、著者プロフィールの内容を強化するよう努めてみませんか。

そのほうが、よっぽど企画採用の可能性が高まります。〔長嶺超輝〕