「これから」を考える絵本。もし、大切な人に介護が必要になったら?
本書は、2006年に京都市伏見区で起きた「京都認知症母殺害心中未遂事件」を題材にした、社会派絵本です。男性は、認知症の母を介護するために、やむを得ず離職。生活苦の末、母親を殺害。自らも命を絶とうとしたものの、未遂に終わりました。
彼と母親の間に何があったのか。それはどうにもならなかったのか。そして、自分の身にその現実がのしかかったら、どうすればいいのか? そんなことを考えるための絵本です。
ハルは、認知症の母の車いすを押して、思い出の場所をたどります。かつて、母親、父親と子どもだったハルが行った場所。今は、成長したハルと、年老いた母親の二人で歩いています。認知症の状態と、母親の顔の間を行ったり来たりする母親。
生活保護は断られました。母親の認知症はひどくなる一方。自分の食事は2日に1度。残ってるお金はあとわずか。もう家に戻ることもできません。どうにもならなくなったハルは、母親との心中を決意するのでした。
母親を愛しく思うがゆえに追い詰められていくハル。淡々とつづられる物語、優しい色合いの絵は、読んでいて切なくなります。
その時、ハルには何ができたのか。また、ハルの心の中では何が起きていたのか。巻末で介護離職防止コンサルタント、臨床心理士、介護福祉系弁護士の見解が掲載されています。
ハルの場合は、介護サービスを受け、復職する方法や生活保護を受ける方法などが考えられました。その一方で、自信を失うと、他人を頼れなくなりやすいとも書かれています。「迷惑をかけたくない」というハルの思いが、彼とお母さんを追い詰める原因の一つでもあったのです。
事件から10年以上経った今もなお、介護問題は深刻です。帯文にも書かれていますが、もし、大切な人に介護が必要になったとき、どう行動すればいいのか。今、考えておくことが必要なのかもしれません。(中山寒稀)
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