single-column_book.php
2018 年 11 月 07 日

ローカルコンテンツと地域再生 観光創出から産業振興へ

著者:

増淵 敏之

出版社:

水曜社

ローカルが持つ可能性とパワーとは?

第二次安倍政権が掲げる「地方創生」は、現状、その達成は危ういといわれています。東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を目的とした政策で、2020年までに東京圏1都3県の人口転出入を均衡させることを目標にしていましたが、東京圏の転入は2017年時点でむしろ増加していますし、本社機能を東京圏に移す企業は過去最多に。

そんな東京一極集中に歯止めがかからない状況でも、著者はコンテンツを利用した観光施策や産業創出に地方再生の可能性を見出しています。

2016年の流行語大賞ベスト10に「聖地巡礼」が選ばれたのは記憶に新しいところ。社会的にも、そのインバウンド効果に期待が集まっています。本書では、その一例として、大ヒットアニメ『君の名は。』をあげています。公式には明らかにされていないものの、その舞台として、岐阜県飛騨市が注目されました。2017年の観光客数は113万852人で前年よりも、12.4%増加。2年連続で100万人の大台を突破したそうです。作品の舞台とされる市立図書館の入館者数を基に推計した結果、聖地巡礼者数は7万3700人にも及びました。

しかし、喜ばしい効果がある一方で、人が集まることで起こる問題もあります。アニメなどの舞台になる場所は、観光地とは限りません。地元住民にとっては生活圏である場所も多く、マナー違反や騒音などの課題を解決することを視野にいれることが必要になってくると著者は言っています

また、地方から生まれるコンテンツもあります。社会現象になった「妖怪ウオッチ」もそのひとつ。福岡のレベルファイブという会社から「妖怪ウオッチ」は生まれました。『月刊コロコロコミック』の連載を皮切りに、ニンテンドー3DSソフトを発売。その後、テレビではアニメの放送を開始し、発売した妖怪メダルは売り切れ続出に。

そんな「妖怪ウオッチ」の出身地でもある福岡市は国家戦略特区の1つである「創業支援のための改革拠点」(創業特区)に選定されています。起業家を支援する土壌があるため、今後はスタートアップ企業が福岡に集まってくることが見込まれています。

これからの新しい流行や文化が生まれてくる可能性が地方にもあることは想像に難くありません。次は、何が生まれてくるのか、ちょっとわくわくしてきますね。また、インターネットが発達している今、業種によっては、「東京」にこだわる必要もないのかもしれません。「地域再生」という少し硬いテーマですが、文化やアニメ、バラエティ番組などの裏側も楽しめる本です。(中山寒稀)

【ご購入はこちら▶】ローカルコンテンツと地域再生 観光創出から産業振興へ (文化とまちづくり叢書)

ローカルコンテンツと地域再生 観光創出から産業振興へ