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2018 年 01 月 27 日

母乳を捨てるフランス人 ヘソの緒に無関心なアメリカ人

著者:

江藤亜由美

出版社:

雷鳥社

最近は、有名人が海外で出産することが珍しくありません。しかし、そのほとんどがアメリカ。それゆえにアメリカでの出産は情報も多くありますが、それ以外の国で出産するとどうなるのか? 本書では、いろいろな国の妊婦生活、出産事情、子育てまで紹介しています。

最近、旅行先として人気が高まっているのがスリランカ。朱美さんは、夫のブライアンさん(イギリス国籍)の仕事の都合で、スリランカで出産することに。妊婦時代は周りからとても親切にされたそうです。道路を渡ろうとすれば、車が止まってくれるし、勤務している会社のデスクには、毎朝、お供え物のようにフルーツがてんこ盛り。

その理由は、スリランカの人口の半分が仏教徒だから。「他人に善行を施すと自分にも返ってくる」という教えがあるそうです。しかも、妊娠中の人に対する善行は、赤ちゃんもカウントされるため、2人分の徳を積めるとのこと。

また、スリランカでは、帝王切開が主流。その理由は自然分娩に保険がきかないのに対し、帝王切開は保険適用になり、安く済むから。「自然分娩です」と言うと「お金持ちなのね」と思われてしまうこともあるとか。

そんなスリランカで朱美さんが子育てを始めたのは、長く続いた内戦が終わる頃。物資が少なく、いつ電気が止まるかわからない。しかし、豊かとはいえない状態であっても、地域みんなで子どもを育てていこうという意識があって、心温かく、とても住みやすい国だったそうです。

一方で、無痛分娩が主流なのはフランス。

“「フランスには、おそらく自然分娩という選択肢そのものがないんじゃないかと思います。国民性とでもいいますか、痛い思いを少しでもしないよう、そういったリスクはできるだけ排除する傾向があります。ですから日本みたいに『痛いけどガンバレ!』という根性を見せることが美徳だなんて発想はありません。逆に、日本の自然分娩の話を聞いたら本気で引かれてしまうかも。”
日本の自然分娩で長男を、フランスの無痛分娩で長女、次男を生んだマリさんは、断然フランスの出産の方が楽だったと語ります。8割が無痛分娩だというフランスでどうしても自然分娩をしたい場合は、事前にしっかりと打ち合わせをしておいた方がいいそうです。

さらにマリさんを驚かせたのは、母乳育児が少数派ということ。母乳が出ても、粉ミルクを飲ませる人がほとんど。その理由はおっぱいの形が崩れるから。マリさんが出産した際に病院には6人の新生児がいましたが、母乳を飲ませていたのはマリさんだけ。日本では母乳を出すためにあれこれ努力をするにもかかわらず、フランスではせっかく出た母乳を捨ててしまうのだそうです。

本書では10か国の出産や育児の体験記が書かれていますが、読んでいるとなんだかワクワクしてきます。その国の出産事情に戸惑いながらも、楽しんでいる様子が感じられるのです。もちろん、不慣れな異国の地の出産には不安がつきもの。でも、著者が言う通り、まずは「どうにかなるだろう!」とおおらかに構えることが大切なのでしょうね。(中山寒稀)

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母乳を捨てるフランス人 ヘソの緒に無関心なアメリカ人