ついに、自分も管理職。昇進の喜びとともにかかってくるプレッシャー。大手の会社であれば、管理職向けの研修が行われたり、同じ管理職という立場の人も多く、心強いものです。でも、小さな会社の管理職であれば、孤軍奮闘しなければいけないことが少なくありません。
本書の著者は、そんな新任管理職を応援する人事研修コンサルタント。16年間の管理職研修の講師を経験し、現場のビジネスマンには「もっとわかり易く、使える本」が必要だと感じたそうです。けれども研修会とは違い、ビジネス書では一方的に言いたいことは伝えられても、その時の状況によって、追加や補足ができません。しかも、活字慣れしていない人にとっては、ビジネス用語や専門用語が羅列された本は難解そのもの。そこで、管理職の基礎感覚が身に付き、しかも気楽に読める本として誕生したのが本書です。
“職場チームを人(点)で観ない。
職場チームというかたまり(面)で観る”
職場チームに必ずいるのが、問題のある部下。著者曰く、初めて管理職になった人は、この部下に引っ張られてしまうのだそうです。そんな時、どう行動すればいいのでしょうか。問題の人に対し、個別に対応をするのは、解決には結びついていかないとのこと。なぜなら、限定的な局所対応になってしまう ため。著者は、その解決方法を次のように言っています。。
“今のメンバー、今の動き方で、どのような成果を出せるのかを考えてみる”
“各々のメンバーを成果が出るように動かしていくのが管理職であり、それを実現していくはたらきそのもの(機能といいます)がマネジメントです。”
個別の人に頭を悩ませるのではなく、チームで成果が出せるようにすること。問題がある部下を含め、それぞれのメンバーの動かし方をマネジメントし、リードしていくことが、管理職には必要になります。実は、これは問題がある部下に限りません。たった1人で特定の業務を担当している部下にも同じことがいえるそうです。その部下が長期入院でもしたら即座に業務が止まってしまうことになりかねません。つまり、常にチームで成果を出すことが大切です。
さらに、中間管理職の悩みの種といえば、「板挟み」。上司と部下の意見が真っ向対決。上司が言っていることが正しければ、もちろん上司の意見を立てるけれど、部下が言っていることにも一理ある。そんな悩ましい状況の対処の方法は次のように言っています。
“板と板、誰と誰の言い分をどれぐらいの配分でブレンディングできるかが中間管理職の見せ場でもあります。”つまり、どちらかの意見を100%取り入れるのではなく、それぞれの意見をブレンドし、それを上手に納得しやすいよう双方に伝えるのが、大切な中間管理職の役割なのです。例えば、部下の係長が無理だという試みに対し、上司の部長が強行しろといった場合、課長の立ち回り方はこうなります。
“部長には、「係長の懸念もまったく心配なしとは言えませんので、~の場合は、…とできるようにしておきましょう。」
係長には、「部長としては、~の見地から将来を見据えて、今、この挑戦的な取り組みだけはしておかないという意向でね。とはいえ、あなたの心配もわかるから、それは折り込んでもらったよ」”
よくあるビジネス書との大きな違いは読みやすさ。最近、よく使われる難解なビジネス用語があまり使われておらず、一般的に使われているビジネス用語のみ。かく言う私も、カタカナビジネス用語が苦手な一人ですが、すんなりと読むことができました。さらに、理論だけではなく、実例が多用されているので、困った時にすぐに役立ちそうです。(中山寒稀)
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