金魚といえば、水槽で飼うのが一般的。透明な水槽であれば、かわいらしく泳ぐ金魚の姿を横から楽しむことができます。ところが、本書がテーマにしているのは「上見」。上見とは、その字の通り上から金魚を見ること。なぜ、「上見」をすすめているのでしょうか。
元々、ガラスの水槽が一般的になるまで、金魚は鉢や池で飼育されていたので、実は上から見るのが伝統的な鑑賞方法。そのため、金魚は「上見」を前提として品種改良されてきています。つまり、透明な水槽で見る「横見」よりも、「上見」の方が金魚の姿がより美しく見えるのです。
言われてみれば、昔は屋外に置かれた火鉢で、金魚を飼育している家庭が珍しくありませんでした。「上見」をするための飼育方法です。ところが、金魚の飼育に不可欠なエアレーション(水に酸素を供給する補助をする器具)を使っていないことが多かったように記憶しています。それは、なぜなのか。本書によると「適度な水量と金魚の数」を守り、金魚に必要な酸素量が確保できれば、エアレーションがなくても金魚の飼育をすることが可能なのだそうです。
また、見た目をより美しくするための色揚げを良くする餌の選び方や、金魚の病気、ケア方法まで、一般的な飼育よりも一歩踏み込んだ飼育書でもあります。
そのほか、専門家ではなくても見学可能な品評会の楽しみ方や、審査の基準、格付け、各地で催される金魚のおまつりや即売会など、参加して楽しむイベントも紹介されています。
尾を揺らして、ゆったりと泳ぐ金魚の姿は、風流そのもの。最近は金魚をテーマにしたアートが人気を呼んでいますが、「金魚に関するトリビア」によると、江戸時代にはひな祭りに金魚も飾ることが習慣になっていたそうです。マニアックに金魚を知りたい、飼いたい、楽しみたい方におすすめの一冊。その奥深さにもっと金魚を知りたくなります。(中山寒稀)
上から見る!風流に金魚を飼うための本