会社組織にとって「人は財産」と言われています。ところが、実際には部下を育てることが苦手だという上司が少なくないのだそうです。人材育成は、人が人を育てるがゆえに難しいところ。本書では、人材育成の手法として、さらには会社の競争優位を確立する手段として、アクションラーニングをすすめています。
“まず、アクションラーニングとは、業務上の問題をテーマにして解決策を考え、実際の行動とその振り返りを通じて社員や組織を育成するトレーニング形態です。
そして、実際の問題をトレーニングで検討し、解決策を立案します。
また、その解決策は、実施されることが必要であり、実施の成果をさらにトレーニングに持ち寄り、振り返りを行うプロセスを回すことによって問題解決を図り、同時に社員と組織の成長を実現するものです。“
職場で現実進行している問題について、チームで対処、解決していくことにより、社員、チーム・組織の学習する力を養成するチーム学習法がアクションラーニングになります。つまり、専門家からのレクチャーによる学習とは異なり、受講者は実践の中で学んでいくことになります。
例えば、次期リーダーの育成は、アクションラーニングを導入することで、効率よく進めることが可能です。本来、大会社のリーダーを育てるためには、異動を繰り返し、キャリアを通して複雑な状況や様々な職務を経験する必要になってきます。ところが、入社してから幹部になるまでの期間では、経験できることには限りがある上に、その職務以外にも、ビジネス判断や、精神面、周囲の人にやるべきことをやらせる力など伸ばすべき力があります。
そこでアクションラーニングにより、リーダーに権限や責任を与えることで、様々な要素を把握し、コントロールすることが必要となってきます。さらに業務を通じて異分野の人と協力して仕事を進める訓練を積むことにもつながっていくため、異動をしなくても飛躍的な成長が可能になります。
“経営は人を持って成すものであり、人材育成はまさに事業戦略です。人材育成という事業戦略を推し進めるためにアクションラーニングはあります。”
トレーニングと実務の境がないアクションラーニングは、受講者のみならず、トレーニング担当者にとっても緊張の連続になります。実際に立案した問題解決策を実践する不安を乗り越えてこそ成長があり、それを支える仲間や会社がある。まさに実践に勝る人材育成はないということではないでしょうか。(中山寒稀)
チームの力で社員は伸びる!