いつもと変わらない朝。著者の自宅に突然、訪ねてきた私服警官。警察手帳とガサ状(家宅捜査令状)を見せられ、いきなり始まったガサ入れ。そのまま、任意同行となり、警察署に連れていかれ、逮捕される。そして、東京にある捜査本部に護送され、気が付けば、留置場で夕食を食べていたそうです。
本書では、冤罪逮捕された著者が体験した、刑事ドラマでは見ることができない逮捕後のリアルな現実を語っています。また、もし冤罪逮捕された場合、どう行動すればいいのか。冤罪被害から自分を守るための法律知識を紹介しています。
逮捕された場合、どのくらいの期間を拘束されるのでしょうか。本書によると、まず警察に与えられた逮捕の有効期限は、48時間。この間に送検手続き(警察が事件に必要な書類や証拠を揃えて、検察に引き渡す)しなければなりません。そして、検察は与えられた有効期限の24時間以内に事件を立証し、起訴するかどうか決めることになります。つまり、逮捕の有効期限は、48時間+24時間になります。しかし、検事が「もっと調べるために引き続き身柄拘束をしたい」と思えば、裁判所に勾留請求することで。10日間×2回(最大20日間)被疑者を勾留することができます。つまり、1回の逮捕で留置場に拘束される最大の日数は、トータルで23日間になります。
しかし、逮捕されても早く釈放される方法があります。それが「略式手続」。軽い犯罪の場合は、罪を認めて罰金を払えば、釈放されます。最短で逮捕の翌日、一般的には3日後ぐらいに釈放されるため、周囲の人に逮捕にされたことを秘密にできる可能性もあります。
ところが、冤罪だった場合、略式手続は「逮捕容疑を認めて自供し、起訴された上に有罪判決を受ける」ことになるため、前科が付きます。海外旅行の時に本来は不要なビザでも取る必要があったり、もし同じような罪で逮捕された場合は常習犯だとみなされ、厳しい判決が下
ることも。また、刑事ドラマに出てくる容疑者が「弁護士を呼べ!」と騒ぐシーンは、実は理にかなっているのです。逮捕された際に関わる警察の捜査担当者や検事、勾留質問の時に出会う裁判官などの事件関係者は、全員が刑事事件のプロフェッショナル。その人たちが逮捕されたド素人の容疑者を法知識やテクニックを駆使して自白を迫ったり、供述の揚げ足を取ったりしてきます。その中で、法知識を持った味方は弁護士のみ。しかも、最初の1回は無料で呼べる「当番弁護士制度」があります。うまく乗せられ、取り返しのつかない供述調書取られるというような失敗を犯す前に、弁護士のアドバイスを受けることは正解なのだそうです。
著者は、幸い容疑が晴れ、起訴されずに釈放されました。もし、起訴をされた場合の流れや、規則正しい健康生活で境界性糖尿病が良くなった「拘置所ダイエット」、「留置場と拘置所、どちらが暮らしやすい?」などの裏話も書かれています。
検事や裁判官、警察官など事件関係者のリアルな人間模様は、刑事ドラマのイメージが変わります。また、冤罪逮捕は意外にも多いとのこと。大雑把な逮捕劇の裏側に、明日は我が身かもしれないと不安を感じずにはいられません。
本書は、2013年に発売した『逮捕されたらこうなります!』の刑事訴訟法(刑訴法)の改正による改訂版になります。(中山寒稀)
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逮捕されたらこうなります!Ver.2