“「あんた、一人目とは思えんええ子育てしとるな。その子強い子になるわ」”
生後間もない娘さんを連れて、初めての公の場。著者は、板張りの冷たい床でおむつ替えをする羽目になりました。季節は夏。冷たい床はむしろ心地よかろうと慣れない手つきでおむつ替えを始めた著者。そこで、先輩ママたちからの助言や冷たい視線が飛びます。「あら、赤ちゃんが可哀そう。」「不衛生じゃない?」
そんな中で、たった一言だけ、聞こえてきた誉め言葉。それが著者の子育てを大きく変えるきっかけに。地元では有名な10人の子育てをした肝っ玉かあちゃんの言葉でした。それまで手探り状態だった子育てに光が見えてきたとのこと。「育児書」に書かれていることよりも、子供が気持ちよさそうにしていること、自分が笑える方を選ぶことが悪いことではないことに気が付いたそうです。そして、著者の人生の目標であった「笑いまくりの毎日」を目指して、子育てをする決心をします。
“『へたれオカン』とは、人並み以上に、「笑う才能」に溢れた母親のことだ。つまり、私が今すべてのお母さんたちにたった一つだけ意識してほしい大切な『あること』とは、どんな時でも、子供たちの前で、子供たちと一緒に笑っていようと意識すること――ただ、これだけなのだ。“
しかし、「笑いまくりの毎日」を目指す著者は、いつでも楽しいことに恵まれてきたわけではありませんでした。DVをきっかけとした離婚や、息子さんの万引き、娘さんの登校拒否など、さまざまな問題に直面していきます。しかし、その都度、家族で笑って乗り越えてきたとのこと。特に著者自身がひきこもりになってしまった時、娘さんは高校を中退してまで、バイトをして支えてくれたそうです。
そして、今、著者の目の前には「自分の人生を自分で歩いている、笑いまくりの子どもたち」がいるとのこと。『どんな人生であっても、笑って生きる力』が子供だけではなく、人間が生きる上で一番の幸せだと著者は言っています。
子育ては正解がないからこそ、どうしても育児本に頼りがちになってしまいます。でも、もしかしたら、子育ての基準は育児本ではなく、もっと親自身や子供が持つべきなのかもしれません。それは、とても勇気がいることなのですが。肝っ玉かあちゃんが著者の背中を押したように、著者が多くの人の背中を押す「肝っ玉かあちゃん」になることを期待したいと思います。(中山寒稀)
へたれオカンは今日も笑う 実録編 アイタタ杉の流「心」の子育て15ヵ条