これからますます増えることが予想される認知症の介護。自分は男だから関係ないと思うことなかれ。現在、介護をしている方の7割が女性だそうです。言い方を変えれば、3割は男性。しかも、今後はますます男性の介護者(介護する側)が増えていくことが予想されます。
著者もそのひとり。奥さんに頼ることなく、認知症の母、祖母の長距離・ダブル介護を担ってきました。どうして、それが成り立つのか。本書は、現役介護者ならではの経験に基づいたラクになれる介護のヒント集です。
認知症介護者が必ずたどる4つのステップがあるそうです。
“第1ステップ 【とまどい・否定】
第2ステップ 【混乱・怒り・拒絶】
第3ステップ 【割り切り、あるいはあきらめ】
第4ステップ 【人間的、人格的理解】“
認知症かどうかわからない、または介護を始めて間もない家族は、ステップ1、2で疲れ切ってしまうとのこと。家族が認知症であることを認められずに悩み、認知症の方を説得したり、怒ったり。その結果、辛くあたってしまうこともあります。しかし、ここで時間を使ってしまうと、適切な介護サービスや医療を受けることができず、認知症が悪化してしまうという悪循環に陥ってしまう可能性があるのです。
やがて、疲弊した家族はあきらめるに至り、そして悟りの境地ともいうべき第4ステップにすすみます。期待通りにいかない、ありのままの認知症の方を受け入れることで、精神的にかなり楽になれるそうです。つまり、この介護者自らが意図してこのステップにすすむことで、好循環が生まれることになります。
本書で特に注目したいのは、介護者の「本音」です。「認知症の人を殺したいと思ったら」「認知症介護者は被害者なのか」「介護離職はいけないのか」など、きれいごとでは済まされない介護の現実に向かい合っています。プロの介護職や医師ではないからこそ言える本音ではないでしょうか。
介護者は受け身ではなく、自ら積極的に動くことで状況を変えられるということにとても納得しました。また、現在も認知症介護中にもかかわらず、ポジティブに介護を楽しんでいる姿勢に好感が持てます。「知ること」「抱え込まないこと」が大切なのだと、実感できました。(中山寒稀)
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