商品が売れない理由は何か。営業担当者の力不足、知名度が劣っている、価格が高い、有名ブランドじゃない……など、思いつく理由は様々あります。
中小企業診断士で、マーケティングコンサルタントを務める著者は、商品力が劣っているわけではないのに売れない原因は、「商品の価値を適切に届けられていないこと」にあると言います。
本書の特徴は、読みやすさとわかりやすさだと思います。「業績好調なカンバイ百貨店」の瓜木社長がテナントの店員に実施した講義という設定で、12項目の「今ある在庫を売る方法」を解説。
研修を受けるテナントの店員がお客様の立場になって考えることで、専門用語を使わずに消費者心理をついた効果的なマーケティングを理解することができる一冊です。
12項目の講義の1つに、「マイナスを開示する」という方法があります。
お客様は日々、大量の情報や宣伝に接しています。どの商品も「これはこんなに素晴らしいですよ」とアピールしてくるため、最初からある程度割り引いて、もっと言えば「疑って」情報に接しているのです。
そこでマイナスを開示することで効果が得られます。
あえて短所も入れておくことで「じゃあ長所の部分は本当なんだな」「それだけ味に自信があるんだな」と無意識に受け入れてしまうのです。短所があることで、心のバリアが下がったのですね。
人気を集めている「わけあり品」がそれに該当します。
「わけあり商品」は、品質が高いけれど、見た目が少し悪いなど、味には関係ない部分に問題があって、正規品としては売れない。だから値引きされているというイメージがあります。確かに、理由がない値引き品よりも、「なぜ値引き品にしているか」という理由がはっきりすることで、買う側ははるかによいイメージを持ちます。
「いいことばかりだと消費者は信じない」という心理をうまくついているのです。
また、12項目の講義の中では、実際の大ヒット商品の裏側が明かされており、中には自分でも見事にはまってしまっているものも。
「朝専用缶コーヒー」は、「朝」に限定し、市場を狭めることで売り上げを伸ばしたとのこと。
朝に缶コーヒーを飲もうと思ったら、たくさんの缶コーヒーがある中でも、やはり「朝専用」に興味をひかれますし、朝ではない時でも印象に残ります。
商品を売るためには、対象になる客を絞り込むことで、その商品の具体的なメリットが伝えやすくなり、指名買いが増えるそうです。また、絞り込みからもれた客でも、その商品に興味を持つようになるので、絞り込むことで逆に「広がる」効果があるとのこと。
消費者が買うのは「モノ」でも、求めているのはそれによって得られる「嬉しい、助かる、ほっとする、楽になる」などの「自分にとっていいことを得るため」だと言われると、とても納得できます。(中山寒稀)
今ある在庫がみるみる売れる12の方法 すぐに役立つ“秘密の講義”始めます。