2019年度の「企画のたまご屋さん大賞」に、『夫のHがイヤだった。』(Mio/亜紀書房)が選ばれました。
著者のMio様と担当編集者の高尾豪様に記念の盾と特製どら焼きを進呈し、企画が本になるまでの経緯や本書の魅力についてお話をうかがいました。
◾️夫婦の悩みを書いたブログがランキング1位に!担当プロデューサー・森久保(以下、森久保):本書はブログ『夫のHが嫌だった。』を元に構成されていますが、最初から書籍化を目指してブログを始めたのでしょうか。
Mioさん:それはなかったです。私は仕事で離婚業務を取り扱っているのですが、その中で、セックスが苦痛で離婚を考える人が少なくないことを知り、誰にも相談できずに悩んでいる人に伝えたい!という使命感に駆られてブログを開始しました。ブログなら、直接相談に来ることができない人にも役立つ情報が届けられると思ったのです。
企画のたまご屋さん代表理事・山本(以下、山本):性の悩みは、相談したくてもなかなかできないですよね。
Mioさん:自分も悩んだ体験があるので、そこからわかったことを相談者にお話すると「私が悪いんじゃないんですね」とか「気持ちがラクになった」と言ってくださることが多くて。ブログには、普段業務の中でお話していることを書いたのです。
森久保:ブログはアメブロ・メンタルヘルス部門の第 1位(2018/2/17―3/8)となりました。
Mioさん:当初は、「全国に100人くらいは読んでくれる人がいるかな?」くらいに思っていたのですが、いきなりアクセスが上がり、感謝のメッセージもたくさんいただくようになりました。そこで初めて、本という形にして残せたらと考え、ほんたまに応募したのです。
森久保:高尾さん、初めて企画を目にした時にどんな印象を受けましたか。
担当編集者・高尾豪さん(以下、高尾さん):夫婦の性愛をテーマにここまで赤裸々に書く人がいること、そして、読者と双方向のやり取りがされていることに驚きました。僕も結婚しているので、他人事ではないテーマでもありますし。
山本:男性にも読んでほしい本ですよね。ちょっとドキドキしますが(笑)
◾️ブログに書かれた真実を「本」という形にして表現する
Mioさん:まず最初に、高尾さんがブログを全部紙に印刷してくれたのですが、それが縦書きになっていて。ブログは横書きで書いていましたが、同じ文章でも縦書きと横書きではこうも印象が変わってくるのかと驚きました。
高尾さん:ブログの文章は、読みやすくするために改行が多くなりますが、空いている行を詰めるとどれだけのボリュームになるのか把握したいという気持ちもあって、縦書きで印刷してみました。
森久保:本書は『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(宋美玄/ブックマン社)などの書籍にかかわっているライターの三浦ゆえさんにも協力していただいています。
Mioさん:三浦さんは、もともと性に関するテーマを多く手掛けているので、重い内容も冷静に受け止めてくださいました。私がこの本を書くに至ったバックグランドなどを全部聞いてから整理して、文章も肉付けしてくださって、いい形になったと思います。
森久保:企画のたまご屋さんの商業出版支援サービス「ほんたま」にも「ブログを本にしたい」という人が応募してくることは多いのですが、ブログの文章をそのまま移植して本をつくるわけではないのですね。
山本:ブログには、書き手の真実の思いが詰まっています。そこを技術でどう支えて表現し、出版をサポートするのかが、ライターや編集者には問われていると思います。
◾️愛に原因を求め過ぎることで深まる夫婦の悩み
森久保:出版後の反響はいかがですか?
Mioさん:女性からは「よくぞ言ってくれました!」という感想をいただきます。「自分も勇気を出して進んでいこう」とか「私もノーというところから始めます」などと聞くと、本を出版してよかったなと感じます。
森久保:男性読者の反応は?
Mioさん:「読んでいて辛い」という感想もありますが、今までなぜ妻にセックスを拒否されているのかわからなくて苦しんでいた人が、原因を知って軌道修正できたという、うれしいメッセージもいただきました。自分がしていたのはジャンクセックス(射精ばかりにこだわった独りよがりなセックス)だった。それをやめたら妻の態度が全く変わったと。
ただ、男性だけではなく、女性も結構勘違いしているのです。セックスがうまくいかないと、「愛がないから気持ちよくなれないのでは?」と思ってしまったり。
森久保:多くの人が愛情と快感は表裏一体だと信じていますが、意外と別物なんですね。
Mioさん:愛はあってもセックスの知識が乏しい二人が結婚すると、男性はAVをまねて「このやり方でいいんだ」と勘違いしてしまう。そして女性は「セックスってこんなものなのか」と思ってしまう。そんなジャンクセックスでは、女性は快感を得ることができず、逆に性交痛を感じてしまう場合もあります。こうなると女性は、次第にセックスに消極的になってしまい、男性は「自分を受け入れてもらえない」と寂しく感じてしまう。そんな二人の感覚のすれ違いから始まるセックスレスは多いのです。
一方、産後の妻の体を労わるあまり、自分から誘うのは控えてしまう夫など、愛があるからこそセックスレスになる夫婦もいます。
◾️インパクトのあるタイトルで本を出した理由
森久保:「嫌」が「イヤ」に変わっていますが、本のタイトルとブログのタイトルは、ほとんど変わっていません。
高尾さん:ブログがアメブロ1位になったのも、このタイトルがあったからこそだという思いがありました。強い言葉だから拒否反応もあるだろうけれど、逆に同じくらいのテンションで引き込まれる人もいるだろうと。
森久保:インパクトのあるタイトルなので「書店で買いにくい」との声もあるようですが。
高尾さん:本の内容がストレートに伝わるタイトルですが、「このタイトルで本を出すからには、内容がしっかりしていないといけない」と、かなり気を遣いました。
Mioさん:この本は、普段セックスのことをあまり話題にしたくない女性にも読んでほしいんです。夫に対して何かモヤモヤした気持ちがあったり、夫とギクシャクしてしまう原因は、もしかしてセックスにあるのかもしれないと気づいてほしい。
高尾さん:本のカバーは白ですが、実は黒バージョンのデザインも検討していました。おそらくMioさんは黒の方が好きだと思ったのですが、手に取ってもらいやすい本にするために白を選びました。
森久保:各章の終わりには、産婦人科医の宋美玄先生のコラムもあります。
高尾さん: Twitterを見ていると「性交痛」という言葉が結構ひっかかってきて、悩んでいる人が多いんだなあとあらためて気づきました。そこで、宋先生の解説を入れて理解を助けるようにしました。
◾️本気で伝えたい内容だから、道が開いた
森久保:企画のたまご屋さんの商業出版支援サービス「ほんたま」への応募を考えている人や、これから本を出版したい人へのメッセージをお願いします。
Mioさん:出版後、「自分も本を出版したくて、いろいろなところに話を持ち掛けているが、ずっと断られている」という相談をいただくこともあります。私は「ほんたま」に企画を応募したら本にしていただけたので、本当に幸運でした。
山本:著者の本気が伝わる企画だからこそ、出版できたのだと思います。
Mioさん:逆に、それしかなかったです。ブログが本になるまでに、何回も何回も文章を読みなおして再構築することで、伝えたい内容に厚みが出て、自分の中にある軸がより明確になりました。時には文才のなさを感じることもありましたが、文章を書くことの魅力や大切さに気づくことができたのは大きな収穫です。
——貴重なお話、ありがとうございました。
【本書の説明】
結婚当初から夫とのセックスが苦痛で悩んでいた「私」が、ブログに書き綴った実話をもとに再構成した実録エッセイ。
夫のことは心から愛していた。だからこそ、セックスだけがうまくいかない現実をどう受け止めていいのかわからなかった。長い間、夫の性的な要求に応えられない自分を責め、うつ病や摂食障害を患った「私」が選択した人生の進路とは?
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【電子書籍はこちら▶】夫のHがイヤだった。
【メディア掲載】日刊ゲンダイ:妻に拒まれる…それは夫の「ジャンクセックス」が原因だ
好書好日:彼のことを愛しているのに、セックスだけがうまくいかない AV男優・森林原人さん×「夫のHがイヤだった。」著者Mioさん対談
前編 https://book.asahi.com/article/12856763
後編 https://book.asahi.com/article/12856838
ダ・ヴィンチニュース:セックスレスで家庭崩壊。摂食障害・うつ病を乗り越えて、『夫のHがイヤだった』の著者がたどり着いた答えとは?
mi-mollet:『夫のHがイヤだった。』豊かなセックスをかなえるものとは?【試し読み付き書籍紹介】
WEZZY:なぜ男性は、女性の「夫のHがイヤだった」を受け入れられないのか
WEZZY:『それでも俺は、妻としたい』(新潮社)著者・足立紳さんとの対談
前編 https://wezz-y.com/archives/72943
中編 https://wezz-y.com/archives/72944
後編 https://wezz-y.com/archives/72945
【「企画のたまご屋さん大賞」とは】
1年間に「ほんたま」を通して出版された本の中から、 企画のたまご屋さんの会員が、
・販売部数
・企画のユニークさ
・出版文化への貢献
などの観点から、最も評価した書籍に贈る賞です。
今回の選考対象は、2018年10月1日~2019年9月30日に、 企画のたまご屋さん仲介によって発行された41作品です。
文責/企画のたまご屋さん 森久保美樹
◆『企画のたまご屋さん大賞』は、2020年をもって終了しました。関係者および応援してくださったみなさま、ありがとうございました!